日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シリカメソ多孔体への光合成膜タンパク質光化学系Iの導入とその機能
*上滝 千尋石坂 壮二野地 智康梶野 勉福嶋 喜章関藤 武士伊藤 繁
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p. 0550

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抄録
シリカメソ多孔体SMMは、内部にナノサイズの六角柱形状の細孔をもつ疎水性の物質である。大きな表面積と内部容積をもつため、タンパク質のような大きな分子の吸着に適していることがわかった。これまでに、好熱性紅色光合成細菌の光合成反応中心複合体(RC)とLH2複合体をそれぞれSMMへ導入した。SMM細孔内へ吸着したRCとLH2はその構造、光化学活性を維持し、熱耐性も向上した(1)。今回は好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus (T.) elongatusから単離した光化学系I(PS I)反応中心複合体を直径23.5 nmの口径をもつSMMに導入した。シアノバクテリアのPS Iは3量体を形成しており、分子量1068 kDaの大きな膜タンパク質複合体である。PS Iの色素環境に影響を与えるタンパク質の構造と、光化学活性は、SMMへの導入前後でほとんど変化がないことが、蛍光スペクトルとCDスペクトルから示された。また、SMM内に導入することにより、PS Iの光化学活性とタンパク質の色素環境の熱耐性が向上した。SMMへの導入後もPS Iへの電荷移動が行われていることを確認した。PS IとSMMの複合体は光合成システムを安定化し、太陽エネルギーを人工利用する素材として活用できる可能性を秘めている。
Oda et al.(2005) :J. Phys. Chem. B 110 (3),1114-1120
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© 2008 日本植物生理学会
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