抄録
近年、チラコイド膜脂質が脂質二重層を形成するのみならず、光化学系超分子複合体の構成成分であることが明らかにされてきている。好熱性藍藻の光化学系II複合体(PSII)の結晶構造中には少なくとも14分子の脂質分子が存在し、そのうち4分子がジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)であることが報告されている。私達は前大会でSynechocystis sp. PCC6803のDGDG合成酵素遺伝子(slr1508)破壊株(以下、変異株)では、DGDGが全く蓄積しないことを報告した。本研究では、DGDGのPSIIにおける機能を明らかにするため、本変異株のPSII特性を解析し、DGDG欠損の効果を検討した。
変異株は光独立栄養条件下での増殖速度、酸素発生活性には野生株との有意な違いは観察されなかった。しかしながら、38-50℃間で細胞を熱処理すると、変異株は野生株に比べ、より低い温度処理で酸素発生活性が低下した。さらに変異株のPSII標品の解析では、単量体の増加と二量体の減少、および表在性タンパク質(PsbO、PsbU、PsbV)の解離が観察され、酸素発生活性も大きく低下することがわかった。この活性低下はPSIIの精製過程で表在性タンパク質が解離し、PSIIが不安定化したためと考えられる。これらの結果から、DGDGはPSIIの機能に必須ではないが、表在性タンパク質の結合を介した酸素発生複合体の安定化に重要な役割を果たしていることが示唆された。