抄録
PsbKとPsbZ は光化学系II複合体(PSII)を構成する低分子量サブユニットであり、ラン色細菌から高等植物まで広く保存されている。PsbKは分子量約4 kDa で1回膜貫通へリックスを持ち、PsbZは分子量約6 kDa で2回膜貫通へリックスを持っている。ラン色細菌PSIIの結晶構造において、両サブユニットはともに複合体の外縁部に存在し、CP43に近接している。これまでいくつかの生物種においてこれらサブユニットの欠失変異体を用いた機能解析が報告されているが、変異株の表現型は様々である。ラン色細菌では、これらサブユニットのいずれを欠いても光独立的に生育できることがわかっている。そこで我々は、これらサブユニットの機能を構造学的見地から明らかにするため好熱性ラン色細菌Thermosynechococcus vulcanus PsbK欠損株およびT. elongatus PsbZ欠損株から、それぞれのPSIIを精製、結晶化し、結晶の性質をX線により調べた。その結果、いずれの変異株からも結晶を得ることに成功し、また、得られた結晶の格子定数は類似していたが、T. vulcanus野生株のPSII結晶の格子定数とは大きく異なっていた。従って、これらサブユニットの欠失が結晶格子内のPSII二量体間の相互作用に影響を及ぼしたことが示唆された。本発表ではPSIIの精製、結晶化法と結晶の性質について報告する。