抄録
光化学系 (PS) IIは、光誘起電子伝達反応と水の分解による酸素発生を担い、D1, D2サブユニット (反応中心複合体)、CP43, CP47 (コアアンテナ)、および、多数のスモールサブユニットから構成されている。これまでの研究から77K蛍光スペクトルにおいて、PS II に由来する蛍光は685 nm (F685) と695 nm (F695) に観測されることが知られており、それぞれCP43、CP47のChl aに帰属されている。
本研究では、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803の形質転換系を利用し、CP43の構造遺伝子 (psbC) を抗生物質耐性遺伝子に置換することによりCP43欠損株を作製した。CP43欠損株は光独立栄養条件下において生育不可能であり、5 mM glucose存在下、30 μE/m2/sの光混合栄養条件 (photo-mixotrophic growth: PMG)、および、15 min/dayの光照射条件下 (light-activated heterotrophic growth: LAHG) にて培養を行った。これらにおけるCP43欠損株の77K蛍光スペクトルは、従来の報告と異なり、435 nmによる励起においてF695が観測されず、686 nmとPS Iに由来する725 nmの蛍光のみが観測された。励起スペクトルは 686 nm 蛍光がフィコビリンに由来することを示唆した。また、時間分解蛍光スペクトル解析においてもほぼ同様の結果が得られた。これらの結果を基に蛍光特性について考察を行う。