抄録
光化学系II(系II)複合体に5 kDaの疎水性サブユニット(Psb30/Ycf12)が存在することが藍色細菌Thermosynechococcus elongatusで見いだされた(Kashino et al. (2007) BBA 1765, 1269)。その遺伝子psb30(ycf12)は真核光合成生物に広く保存されているが、被子植物には見いだされていない。藍色細菌の欠損株は光合成的に生育するため、Psb30は系II活性に必須の成分ではなく、その機能は不明のままである(2007年度年会において発表)。本研究では、Psb30の機能と存在部位の解析を進めるため、緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)を用いて、psb30葉緑体遺伝子の破壊株を作出し、かつ合成オリゴペプチドに対する特異抗体を作製した。クラミドモナスでもpsb30欠損株は系II活性を保持し、光合成的にも生育した。今後ストレス環境下での生育への影響を調べる予定である。一方、種々の系II欠損株ではその蓄積量は大きく減少していたが、精製した系IIコア複合体にすべてのPsb30が回収された。結晶構造解析から未同定の2種の小型ポリペプチドがそれぞれCP43とD1/D2反応中心に結合することが示されている。現在、系IIコア複合体をサブ複合体へ部分解体し、Psb30の分布を調べることにより、系II複合体内でのPsb30の結合部位の特定を進めている。