日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光ストレス下における呼吸系遺伝子発現の制御機構
*吉田 啓亮寺島 一郎野口 航
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p. 0565

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抄録
植物ミトコンドリアには、ATP合成と共役しない呼吸経路が複数存在する。これらの経路は様々なストレス環境下で誘導されることが知られているが、その制御機構については不明な点が多い。本研究では、シロイヌナズナを用いて、光ストレス下における呼吸系遺伝子発現の詳細な制御機構や、その経路間の違いについて調べた。
これまでの研究と同様、シアン耐性呼吸に関わるAOXの遺伝子発現やタンパク量が強光処理後に増加することを確認した。また、AOXだけでなくNDA1、NDB2、NDC1、COX6b、CI76などの遺伝子発現も強光処理によって増加した。NDB2はAOX1aと強く共発現していたのに対し、強光誘導される他の遺伝子は異なる発現パタンを示した。阻害剤等を用いて人為的に光合成系や呼吸系を操作したところ、AOX1aやNDB2の発現は主に呼吸系の阻害によって強く誘導されたのに対し、NDA1の発現は主に光合成系からの活性酸素種生成に影響を受けた。また、NDC1、COX6b、CI76などの発現は操作実験による影響を受けなかった。強光処理を高CO2環境下で行うと、いくつかの呼吸系遺伝子の発現がさらに誘導され、光合成の上昇による細胞内代謝の変化も呼吸系遺伝子の発現制御に関与していることが示唆された。これらの結果を統合し、光ストレス下での呼吸系遺伝子発現の制御モデルを提案したい。
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© 2008 日本植物生理学会
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