抄録
葉緑体におけるRNA編集は、RNA上の特定のシチジンをウリジンへ脱アミノ化する過程である。シロイヌナズナ変異株crr4は葉緑体ndhD遺伝子の開始コドンを作るRNA編集能力を特異的に欠く。CRR4はPPRタンパク質をコードし、RNA編集部位周辺の配列に結合することで編集部位の認識を行う。CRR4は脱アミノ化を行うドメインをもたないため、葉緑体RNA編集はPPRタンパク質と共に働く未知のRNA編集酵素により行われると考えられる。本研究ではこの因子の同定を目的とし、crr4-4サプレッサー変異株の単離を行った。crr4はCRR4がわずかに機能する弱いアレルであり、葉緑体NDH複合体活性が大きく減少している。crr4-4にEMS変異原処理を行い、約2万5千のM2個体からNDH活性が野生株レベルまで回復した30のサプレッサー変異株候補を選抜した。候補株ではNDH複合体蓄積量の回復が確認された。しかしndhDのRNA編集活性の顕著な回復は確認されなかった。サプレッサー変異は、crr4-4のみに働くものとヌルアレルのcrr4-3にも働くものが存在する。現在候補株について原因遺伝子の同定を進めている。