抄録
光合成におけるATPとNADPHの合成量比の制御に循環的電子伝達経路が重要な役割をはたしていることが近年の研究で明らかとなってきた。循環的電子伝達経路には、NAD(P)H dehydrogenase (NDH)複合体を介したNDH 経路とFerredoxin:plastoquinone oxidoreductase(FQR)経路の2つが存在する。当研究グループでは、これまでNDH経路の生理的機能とNDH複合体の構造に関する研究を行ってきた。NDHは、ComplexI のホモログであり、これまでに、葉緑体ゲノムにndh遺伝子が全部で11個存在し、核ゲノムに3個以上存在することが明らかになっている。しかし、NDH複合体には未同定の構成サブユニットが複数存在すると考えられ、特に「光合成型NDH複合体」に特有な電子供与体を認識し酸化するために重要なサブユニット群の同定に関心が集まってきている。
本研究ではシロイヌナズナの共発現プロファイルを用いたin silicoスクリーニングより単離された7個の新規サブユニット候補タンパク質について、シロイヌナズナNDH変異株およびC4植物を用いてBN-PAGEなどの生化学的手法を用いた解析を行った。これらの解析から推測される新規サブユニットと既知サブユニットとの関係について考察する。