抄録
グルタチオンは葉緑体に多量に存在するトリペプチドで、光合成により産生されるATP依存の2段階の反応で合成される[1]。本研究では、グルタチオンが光合成の制御に関わるかを明らかにするため、内生グルタチオン量が野生型の15-30%に減少したシロイヌナズナ変異体cad2-1を用いて光合成への影響を調べた。野生型に比べcad2-1では、光化学系電子伝達が低下しnon-photochemical quenching (NPQ)が高い傾向が認められたことから、グルタチオン量の低下は光合成反応を抑制すると考えられた。cad2-1のRubisco量は野生型の75%に減少していた。他のカルビン回路酵素であるアルドラーゼがグルタチオンによって制御されることを考え合せると、グルタチオン量の低下はカルビン回路の反応を抑制し、その結果、電子伝達の抑制につながったと考えられた。本発表では、cad2-1におけるアルドラーゼ活性や異なるCO2濃度条件下でのCO2固定速度の結果からグルタチオン量とカルビン回路との関係について考察する。
[1] Ogawa et al. (2004) Plant Cell Physiol. 45: 1-8