日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アブシジン酸が葉内CO2拡散コンダクタンスに与える影響
*宮沢 真一吉村 智美三宅 親弘
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p. 0595

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抄録
C3タイプの陸上植物が光合成を行う際、基質となるCO2は、外気と葉緑体のCO2濃度勾配に従って拡散する。気孔から気孔腔までの拡散コンダクタンスは気孔コンダクタンス(gs)と呼ばれ、一方、気孔腔からRubisco活性部位までの拡散コンダクタンスは、葉内CO2拡散コンダクタンス(gi)と呼ばれる。草本や樹木など様々な植物を対象にした多くの研究から、gsとgiの間には正の相関があることが知られる。一般的に、植物は乾燥ストレスにさらされると、根から生産されたアブシジン酸(ABA)によって、気孔を閉鎖させ、gsを低下させる事はよく知られる。一方で、ABAがgiにどのような影響を与えるのか調べた研究は見当たらない。そこで、タバコ(Nicotiana tabacum Xanthi.)の葉柄から、様々な濃度(0.125~5μM)の合成ABAを与え、光合成測定装置により、葉内CO2濃度(Ci)-純光合成速度(A)曲線を作成した。これと同時に、クロロフィル蛍光強度を測定し、葉緑体CO2濃度(Cc)を計算した。A-Ci曲線とA-Cc曲線の初期勾配の差から、giを推定した。その結果、ABAを添加すると、A-Ci曲線の初期勾配とgiは、顕著な減少を示したものの、A-Cc曲線の初期勾配はほとんど変わらなかった。以上の結果は、gsと同様に、giにおいてもABAを介した制御機構が存在する事を示唆した。
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© 2008 日本植物生理学会
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