日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナにおける液胞プロセシング酵素は葉の老化過程に関与する
*黒柳 美和Kansup Jeeraporn山田 健志西村 幹夫西村 いくこ
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p. 0657

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抄録
液胞プロセシング酵素(VPE)は病原体感染や病原性毒素により誘導される細胞死(1,2),種皮形成過程における細胞死(3)に関与することが見いだされた.この他にもVPEの遺伝子発現は,シロイヌナズナにおいて老化や傷害応答などによって誘導されることがわかっている.そこで,シロイヌナズナの老化過程におけるVPEの役割について調べることにした.葉や根などの栄養器官で主に働くVPE は経時的にその発現量が増加し,VPE活性も上昇した.老化の誘導に関与する植物ホルモン(エチレン,サリチル酸)の影響を調べるため,各変異体を用いてVPE活性を測定した結果,これら変異体におけるVPE活性が抑制された.老化過程でのVPEの機能にエチレンやサリチル酸の関与が示唆された.シロイヌナズナに存在する4つのVPE遺伝子を破壊した変異体(VPE-null)を用いて,老化過程における葉の表現型を観察したところ,VPE欠損により葉の老化が遅延する傾向が示された.さらに,VPE-nullにおける液胞に局在するプロテアーゼの挙動をイムノブロット法により調べたところ,RD21, AtCPYなどのシステインプロテアーゼが蓄積していた.以上の結果から,VPEは液胞内のタンパク質分解を制御することで,葉の老化過程に関与していることが考えられた.

(1) Hatsugai et al., 305, 855-858 (2004) Science
(2) Kuroyanagi et al., 280, 32914-32920 (2005) J. Biol. Chem.
(3) Nakaune et al., 17, 876-887 (2005) Plant Cell
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© 2008 日本植物生理学会
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