日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネTIFY/ZIMモチーフタンパク質遺伝子の過剰発現によるイネの生長促進
*羽方 誠岡 義人中村 英光村松 昌幸清田 誠一郎天野 晃土岐 尚子梶川 真理子馬場 晶子田切 明美川越 靖土岐 精一市川 尚斉松井 南長村 吉晃廣近 洋彦高野 誠市川 裕章
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p. 0658

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抄録
我々は、遺伝子の構成的過剰発現がもたらす異常表現型を指標にした包括的遺伝子機能解明システム〔FOX (Full-length cDNA Over-eXpressor gene) Hunting System〕をイネに適用している。その過程で、顕著な生育促進を示す2つの独立したFOXイネ系統を見出した。これらの系統は稈や根の伸長促進や種子胚乳肥大等を示したが、節間や胚乳の細胞を詳しく観察した結果、伸長促進形質は細胞の伸長ではなく、分裂の促進に起因していた。両系統ではTIFY/ZIM モチーフタンパク質をコードするcDNA(FR29と呼称)を過剰発現していた。FR29遺伝子発現は遠赤色光照射や傷害により迅速かつ一過的に上昇したことから、FR29の光およびストレスシグナリングへの関与が示唆された。シロイヌナズナではJAZ(JASMONATE ZIM-DOMAIN)タンパク質がSCFCOI1ユビキチンリガーゼのターゲットで、ジャスモン酸(JA)応答性遺伝子発現のリプレッサーとして働くことが示されている(Thinesら 2007他)。FR29-FOXイネ系統にMeJAを処理したところ、JA感受性の低下やJA応答性遺伝子発現誘導の抑制が見られた。以上の知見から、FR29はJAシグナリングを抑制的に制御する一方、細胞分裂を促進することで植物の生長を促す機能を持つと考えられる。
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© 2008 日本植物生理学会
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