抄録
アッケシソウ (Salicornia herbacea) は海岸部や塩湿地に自生する塩生植物であるが、その成長機構についてはほとんど知られていない。本研究では、NaCl存在下におけるアッケシソウの成長とそのパラメーターについて調べた。アッケシソウ種子をNaCl溶液を含む濾紙上で発芽させたところ、NaCl濃度の上昇に伴って発芽時期が遅くなったが、NaCl 1 Mの高濃度においても発芽し、最終的にはいずれの濃度においても同程度に発芽した。アッケシソウの芽生えを水耕栽培したところ、NaClを含まない培地に比べNaCl 100-200 mMを含む培地でより成長が良好であった。水分含有率は、NaCl 100-200 mM処理区では低下しなかったものの、より高濃度処理区においては低下した。細胞の浸透濃度はNaClの処理濃度の増加に伴って高くなった。また、暗黒下NaCl存在下で生育させ、クリープ粘弾性解析法を用いて胚軸の伸展性を調べた結果、細胞壁の粘性の低下が認められた。一方、NaCl 100 mM、KCl 100 mMおよびマンニトール 200 mM存在下で生育させた植物の胚軸の成長を調べたところ、NaCl処理区では無処理区と比較して生重量の増加が認められたが、他の処理区では無処理区と同程度かあるいは減少した。以上の結果から、アッケシソウにおいてはNa+が特異的に成長を促進しすること、 Na+存在下においても細胞の吸水が阻害されないこと、さらにNa+によって細胞壁の粘性が低下し細胞伸長が促進されることが示唆された。