抄録
FtsHプロテアーゼが欠損したシロイヌナズナでは、斑入りの表現型を示す。このことから、葉緑体タンパク質の品質管理・維持を行っていると考えられる。FtsHプロテアーゼは金属依存性のプロテアーゼで、膜貫通領域、ATPase領域、プロテアーゼ領域の3つからなる。ATPase領域は基質タンパク質を変性させ、変性したタンパク質をプロテアーゼドメインに送り、分解すると考えられている。そのためftsh5が変異している斑入り形成株である、VAR1変異株に由来するDNAのATPase領域の発現系を構築した。まず、この領域をBL21-CodonPlus (DE3)-RIL に導入し、IPTGを添加後、可溶性画分にタンパク質が含まれるように過剰発現させた。発現させたATPase領域をHis-Tagカラムによる精製を行い、精製されたタンパク質がATPase活性を持つこと、このタンパク質がVAR1のATPase領域であることをウエスタンブロットとペプチドシークエンスによって確認した。また、最適pHや最適Mg2+濃度、様々な阻害剤の検討など、生化学的な性質の一部を明らかにした。阻害剤の中でEDTAによる阻害が顕著に確認できたことから、VAR1のATPase領域は2価金属に依存していることが明らかとなった。現在は、Km、Vmaxの算出などを中心に、温度依存性や基質類似体の検討を行っている。