抄録
葉緑体を構成するタンパク質の多くは核にコードされている。核コードの新規葉緑体タンパク質の機能を明らかにするため、シロイヌナズナのAc/Dsトランスポゾンタグラインで単離された色素体異常を示すapg変異体の解析を進めている。その中のひとつ、apg9変異体はアルビノ表現型を示し、遺伝子破壊変異体であることを確認した。APG9はSAPドメインとpentatricopeptide repeat(PPR)ドメインを持っており、SAPドメインはDNA結合ドメインであることが報告されている。PPRタンパクは高等植物でRNAの成熟過程に関与するという報告があるが、これらドメインのAPG9における機能は未知である。apg9変異体ではRubisco LSU・SSU、OEC23、LHCという重要な光合成タンパク質が検出されなかった。この変異体では正常なタンパク質が合成できず、葉緑体形成が行われていないためアルビノ表現型を示すと考えられる。apg9変異体のプロセシング異常を調べたところ葉緑体ゲノムの遺伝子rpoA、rpoB、rpoC1、rpoC2、4.5s-rrn、5s-rrn、rbcLの転写産物において異常が見いだされた。一方核ゲノムの遺伝子cab、rbcSの転写産物には異常は見られなかった。APG9が多くの葉緑体遺伝子のRNA成熟過程に関係していることが分かったので報告する。