抄録
染色体は、極性を持つ微小管とそれに結合して微小管の動態を制御する各種微小管付随タンパク質から構成される有糸分裂紡錘体によって次世代の娘細胞へと分配される。動物細胞での研究から、分裂後期の染色体の移動は紡錘体微小管の動態を反映して二つの過程からなることが知られている。一つは動原体微小管が短縮することによって染色体が極方向へ移動する後期Aであり、もう一つは重複域微小管同士の押し離しと星状体微小管の引き離しによって両極が離れることにより染色体が移動する後期Bである。後期Aと後期Bは独立した機構であり、酵母や動物細胞における染色体分配への後期Bの寄与は染色体の移動距離に換算して40%以上である。一方で高等植物細胞では後期Bの過程の存在は定かでなかった。そこで我々は、高等植物細胞であるタバコ培養細胞BY-2を用いて微小管と染色体を可視化した形質転換細胞株BY-GTHRを作製し、後期の紡錘体伸長を測定した。その結果、紡錘体伸長による染色体移動への寄与が明確に示され、それは40%程度であることが明らかとなった。現在、紡錘体微小管の動態の生物種による多様性の成因を探るため、ヒメツリガネゴケを用いて後期紡錘体微小管の動態を定量し、BY-2細胞との比較解析を試みている。