抄録
これまでに、葉の基部領域の観察から維管束分化・形成過程を時空間的な連続性を維持した状態で追跡できるイネを用いて、維管束形成機構の解析を進めてきた。昨年の本大会で、横走維管束の形成間隔が狭まり、その一部で過剰に分化して塊状になる突然変異体の原因遺伝子候補を単離しcommissural vein excessive1 (coe1)と名づけたことを報告した。今回は、昨年度同定したCOE1の機能解析を進めた結果を発表する。昨年度単離した点変異のcoe1-1に加え、新たなアリルcoe1-2を得た。coe1-2は挿入変異のノックアウト変異で、より強い表現型を示したが、基本的には同様の表現型を示した。この2つが基本的に同一の表現型を示したことから、膜受容体型キナーゼをコードしていると考えられるCOE1が横走維管束の形成間隔の決定に関与していることが明らかとなった。また、ホモロジー検索から、シロイヌナズナ中にも複数のイネのホモログ遺伝子が存在することが明らかとなった。そこで、これらのプロモーター領域にGUSを繋いだ遺伝子をもつトランスジェニック植物を作成した。その結果、これらのプロモーターは維管束特異的に発現することが明らかとなった。これらの結果と、さらに現在行っている機能解析の結果を加え、この受容体が維管束の分化起点決定にどう関わっているのか議論したい。