抄録
植物細胞の分化過程におけるクロマチンの動態および遺伝子の発現変動に関する新たな知見を得るために、ヒャクニチソウ単離葉肉細胞培養系を用いて、管状要素への分化転換に対するDNA メチル化酵素阻害剤5-azacytidine(azaC)とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤TSA の影響を調べた。その結果、いずれの阻害剤を添加した場合でも、阻害剤の濃度および添加時期に依存的に管状要素への分化が阻害された。これにより、管状要素分化転換過程においてもエピジェネティックな発現制御機構が関与している可能性が示唆された。そこで、ヒャクニチソウジーンチップを用いて、阻害剤添加が遺伝子発現に与える影響を網羅的に調べた。その結果、azaC 添加から24 時間後に約400 遺伝子が、またTSA 添加から6 時間後に約500 遺伝子が、阻害剤未添加のコントロールと比較して5 倍以上の高レベルの発現を示した。本発表では、それぞれの阻害剤添加後の遺伝子発現パターンについて詳細に報告する。