抄録
これまでに我々は、シロイヌナズナより強光・高温ストレス応答性の熱ショック転写因子(HsfA2)を同定し、HsfA2がHSP、APX2、ガラクチノール合成酵素(GolS)などの標的遺伝子の発現を誘導することで、耐性能の獲得に寄与していることを明らかにした(Plant J., 2006)。本研究では、HsfA2を介した応答機構を解明するために、HsfA2による標的遺伝子の発現制御機構を詳細に解析した。これまでにHsfA2ノックアウト株において強光応答性の発現が著しく抑制されていたHSP18.1-CI、GolS1、BAGはHsfA2により直接制御されていることが示唆された。そこで、これらの遺伝子のプロモーター領域に存在するHsfA2の認識領域を決定するため、培養細胞を用いた一過的発現系によりルシフェラーゼアッセイを行なった。その結果、HsfA2による転写活性化はHSP、GolS1、BAGプロモーターのそれぞれ-137、-290、-92 bpからTATA boxまでの領域の欠損で著しく抑制された。この領域には複数の熱ショックエレメント(HSE)のコア配列が存在していた。さらなる解析の結果、HsfA2はTATA box近傍に2つ以上のHSEが存在することで標的遺伝子の発現を高いレベルで誘導できることが示唆された。現在、強光ストレス条件下におけるHsfA2の遺伝子発現機構をゲルシフト法を用いて解析している。