抄録
モデル植物であるシロイヌナズナにおいて転写制御因子は2000個前後存在することが予測されている。これらの大部分は転写活性化因子であると考えられてきたが、EARモチーフと名付けたモチーフが転写抑制活性を持つことを見出したことから、多くの転写因子が転写抑制因子として機能する可能性が示唆された。本研究では、まずシロイヌナズナにおいてEARモチーフを含む植物特異的なリプレッションドメインが存在する遺伝子を探索した。その結果シロイヌナズナでは約30000の遺伝子中、約1200遺伝子でこれらのモチーフをコードする領域が存在することがわかった。転写因子に限ると約2000個中、約250個の転写因子がこれらのモチーフを持っていた。このことから、リプレッションモチーフは統計的に有意に高頻度に転写因子に偏って存在しているといえる。また、リプレッションモチーフを持つ250の転写因子について、全ゲノムが解読された他の植物4種(イネ、ポプラ、ブドウ、ヒメツリガネゴケ)のオルソログにおいて、そのモチーフが保存されているかを調べた。その結果、約160の遺伝子においてシロイヌナズナ以外の2種以上で保存されていることがわかった。これらは実際に転写抑制因子である可能性が高いと思われ、現在順次確認実験を進めている。