抄録
シロイヌナズナのHSI2 は、B3 DNA 結合ドメインに加えてC末端部に糖誘導性レポーター遺伝子の転写抑制に必要なEAR転写抑制モチーフを持つ。HSI2とその相同因子HSL1の単独の遺伝子破壊株は野生株と変わらない表現形を示す。しかし、交配によって得られる二重破壊株(KK変異株)種子は、発芽後4日目以降に培地の糖依存的にLEC遺伝子群や種子成熟期特異的遺伝子群を強く発現し、胚軸が肥大して大量の種子貯蔵タンパク質や油脂を貯蔵して約1週間後に生育を停止する。HSI2とHSL1は発芽後の胚発生プログラムの抑制やメリステム機能に重要な共通の役割を担うと推定され、その標的遺伝子と発現抑制機構に興味が持たれる。HSI2とHSL1遺伝子のプロモーターとGUSとの融合遺伝子の発現から、両者は胚を含む様々な組織で大部分がオーバーラップするように発現していることなどが明らかになった。KK変異株は発芽後1週間で成長が停止するため、HSI2とHSL1の詳細な機能解析は困難である。HSI2のDEX誘導型RNAiをhsl1破壊株に、またHSL1のDEX誘導型RNAiをhsi2破壊株に導入したところ、いずれの場合にも培地中のDEXに依存して胚軸が肥大して成長が停止、あるいは遅延する形質転換ラインが得られた。現在これらのDEX誘導型KK変異株を用いて解析を進めている。