抄録
植物は病原菌の感染を認識し、ファイトアレキシンの生産を含む様々な抵抗性反応を誘導する。イネにおけるジテルペン型ファイトアレキシンの一種であるモミラクトン類生合成については、現在までにOsCPS4、OsKSL4、CYP99A2、CYP99A3、OsMASの5種の遺伝子が関与し、それらが4番染色体においてクラスターを形成していること、これらの遺伝子はキチンエリシター処理により同調的に発現誘導されることが示された。これらの5種の遺伝子うちOsKSL4については、前年度大会において、その発現を制御するbZIP型転写因子であるOsTGA1が同定されており、さらにOstga1変異体を用いたマイクロアレイ解析によりOsTGA1がOsKSL4以外のモミラクトン生合成酵素遺伝子の発現制御にも関与する可能性が示されている。今回は、OsTGA1過剰発現株を用い、OsTGA1の機能についてさらに解析を行った。OsTGA1過剰発現培養細胞におけるOsKSL4の発現解析、ファイトアレキシン定量を行ったところ、OsKSL4の恒常的発現が認められると同時に、モミラクトン類の蓄積も観察された。さらに他のモミラクトン類生合成酵素遺伝子についても恒常的発現が認められたことからOsTGA1がクラスター単位で、複数の遺伝子の発現を制御している可能性が示された。