抄録
日本型イネにはプラスミド様の内在性2本鎖RNA(Endoranavirus)が存在する。本来、2本鎖RNA(dsRNA)は分子構造的にRNA干渉のトリガーとなるが、内在性dsRNAは全ての組織の細胞から一定コピー数で検出される。我々は内在性dsRNAのコピー数維持とRNA干渉との関係を解明する目的で、RNA干渉関連遺伝子であるRDR1-5、DCL2、DCL3aそれぞれのノックダウン系統における内在性dsRNAの有無を解析した。その結果RDR1-3、RDR5ノックダウン系統においては全ての個体から内在性dsRNAが検出された。一方、DCL3aノックダウン系統では少数の個体で脱落が観察され、さらにRDR4、DCL2ノックダウン株においては、内在性dsRNAは全ての個体から検出されなかった。そこで、内在性dsRNAが失われたRDR4、DCL2ノックダウン系統に対して、内在性dsRNAを有する野生型の日本晴イネを内在性dsRNAドナー株として用い、相反交雑による内在性dsRNA導入実験を行った。その結果、RDR4ノックダウン株のF1個体中では内在性dsRNAは通常通り安定に維持されていた。一方DCL2ノックダウン株のF1個体においては内在性dsRNAの脱落現象がみられた。これらの結果から内在性dsRNAのメンテナンス機構にDCL2が何らかの影響を与えていることが示唆された。