抄録
RNAサイレンシングに関与する2本鎖RNA結合タンパク質としてDICERが良く知られている。シロイヌナズナではDICER遺伝子が4種類存在しており、そのタンパク質は異なる経路で働いていることが示されている。また、DICERは別の2本鎖RNA結合タンパク質と相互作用することが多くの生物種で見出されている。そこで、シロイヌナズナにおける2本鎖RNA結合モチーフを有するタンパク質(DCL1-4, HYL1/DRB1, DRB2, DRB4, DRB5)について生化学的な解析を行った。その結果、DCL1とHYL1/DRB1、DCL4とDRB4が特異的に結合することを見出した。また、免疫沈降法を利用した解析を行った結果から、DCL4とDRB4が実際に生体内で相互作用しており、複合体を形成することが示唆された。また、HA-tag融合DCLファミリー強制発現体を用いた実験によって、DCL4-DRB4に加えてDCL1-DRB4の結合が観察された。以上の結果から、植物においては複数存在するDICERとHYL1/DRBファミリーの特異的な結合を中心としたいくつかの複合体が存在し,それぞれがジーンサイレンシング現象において分業を担っている可能性が考えられた。また、現在、その他の2本鎖RNA結合タンパク質について免疫沈降法等を用いた解析を行っている。