抄録
シアノバクテリアは、総膜脂質の1%程度しか存在しないモノグルコシルジアシルグリセロール(MGlcDG)と呼ばれる希少な糖脂質を持っている。しかしMGlcDGは、シアノバクテリアの膜脂質の約半分を占めるモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)生成の前駆体となる重要な脂質である。このMGlcDGはUDP-グルコースとジアシルグリセロールを基質とした糖転移反応によって生成されることが知られており、Synechocystis sp. PCC 6803ではsll1377がその酵素活性を持つことが当研究室によって明らかになった。sll1377には、β-糖転移酵素に広く見られる‘D,DAD,QXXRW’というモチーフが保存されている。本研究では、モチーフ中のアミノ酸残基にD147Q、D200A、R329Q、R331Aという点変異を導入して4種類の変異酵素を作製した。これらの酵素を大腸菌で発現させ、MGlcDG合成活性を測定したところ、野生型酵素と比べて非常に低い活性しか持たないことがわかった。加えて、これらの酵素の更に詳細な生化学的解析もおこなったので報告する。また、近年報告があった高温や強光などの各種ストレス条件下でのMGlcDGの蓄積と、sll1377の遺伝子及びタンパク質の発現と活性の変化の相関性についても報告する予定である。