抄録
フロロタンニンは褐藻に特有のポリフェノールで,抗菌作用等の生理機能を有することが知られている.ベンゼン環の1,3,5-位にOH基を持つフロログルシノールの多量体であり,褐藻の乾燥重量の1~20%を占め,褐藻に特有のフィソードと呼ばれる細胞内小器官に蓄積されている.このフロロタンニンの生合成機構や生理学的役割については不明な点が多い.これまでに,いくつかの褐藻においてメチルジャスモン酸処理やUV照射によりフロロタンニン蓄積量が増加したという報告がなされており,傷害応答やUV応答への関与が示唆されている.本研究では,褐藻の一種であるマコンブ (Laminaria japonica) の雌雄両配偶体 (n) を人工海水 (ASP12NTA培地) において無菌条件で培養したものを用いてフロロタンニン蓄積に関する解析を行った.フロロタンニンは青色光で励起すると緑色の蛍光を発することが知られているが,マコンブの雌雄両配偶体において, UV-B照射によってフィソードと思われる細胞内小器官にフロロタンニン蓄積が誘導される様子を,蛍光顕微鏡を用いて初めて観察した.また,雌雄両配偶体においてフロロタンニン蓄積が誘導されるUV-B照射条件を検討し,明らかにした.現在,Suppression subtractive hybridization法を用いてUV-B応答遺伝子の単離を試み,その中からフロロタンニン蓄積誘導に関与する遺伝子の同定を試みている.