抄録
インド産シソ科植物であるColeus forskohlii は、心臓病、呼吸器疾患等に対する民間療法薬としてインドで古くから用いられてきた。その生理活性はフォルスコリンという二次代謝産物に由来することが知られている。このフォルスコリンはアデニル酸シクラーゼを直接活性化し、cAMPの生産を亢進させる機能をもつ。その生理作用により、医薬品に使用されるだけでなく、近年ではダイエット向け健康食品にも使用されるなど、その市場は広がってきている。そのため化学合成や培養細胞によるフォルスコリンの大量生産が研究されているが、未だ実用化には至っておらず、その供給は植物体からの抽出が大部分を占めており、極めて高価である。また、これまでC. forskohliiに関して分子生物学的な研究はほとんど報告されておらず、フォルスコリンの合成経路も解明されていない。そこで我々はフォルスコリンの大量生産株の作製及び合成経路の解明を目的とし、フォルスコリン合成を促進させる遺伝子の網羅的解析法を考案した。有用遺伝子の網羅的選抜に有効なツールであるFOX hunting system を利用し、植物遺伝子の過剰発現体を選抜することにより、フォルスコリン合成量の増加をもたらす遺伝子を探索する。ハイスループットな系の確立のため、フォルスコリンの検出には動物培養細胞系を用いる。本発表ではその選抜法の詳細とその結果について報告する。