抄録
植物は野外で発生するオゾンにより葉にクロロシスを生じたり、光合成や生長が阻害されたりしている。我々はこのような植物のオゾン障害や応答・耐性の分子機構を解明するため、シロイヌナズナを用いてオゾン感受性突然変異体を単離、解析している。そのうちの一つにozs (ozone-sensitive) 1 変異体があり、その原因遺伝子OZS1はTDT(Tellurite resistance/C4-dicarboxylate transporter)ファミリーに属するトランスポーター様タンパク質をコードしていることがわかっている。ozs1変異体の過酸化水素、低温や強光ストレスに対する感受性は野生型と差がないのに対し、ガス状大気汚染物質(オゾンや二酸化イオウ)には感受性であることから、ガスの吸収量が野生型と異なる可能性が考えられた。そこでozs1変異体の気孔コンダクタンスと気孔開度を測定したところ、これらの値が野生型より高いことがわかった。さらにozs1変異体の気孔は、野生型に比べて常に開度が高い状態で日周変動しており、乾燥ストレス下では、ozs1変異体は野生型に比べ萎れやすいことが明らかになった。また光、ABA、高濃度の二酸化炭素(1000 ppm)などの処理に対して、ozs1変異体は野生型同様正常に応答していた。以上の結果から、OZS1タンパク質はこれらのシグナルに対する応答に関与するのではなく、常に気孔を閉じた状態に保つ方向に作用することが示唆された。今後OZS1の作用メカニズムを明らかにしていく予定である。