抄録
受容体様キナーゼ(RLK)はシロイヌナズナゲノム中で大きな遺伝子ファミリーを形成しており、植物の生長や発達だけでなくホルモンやストレスに対する応答においても重要な役割を担っている。マイクロアレイ解析により選抜し、ノーザン解析により低温ストレス条件下で顕著に発現が誘導されることが確認されたロイシンリッチリピートを持ったRLK(LRR-RLK)をLIK1(LOW TEMPERATURE INDUCED RECEPTOR-LIKE PROTEIN KINASE)と名付けた。LIK1は低温ストレス1時間後に発現誘導されることが示された。次にLIK1pro:LIK1-sGFPを形質転換した植物体を用いてLIK1の組織特異性や細胞内局在を解析した。根端、根の維管束組織、茎頂分裂組織で細胞膜上に蛍光が観察され、低温処理した植物の根でより強い蛍光が観察されたことから、LIK1はこれらの組織で機能すると考えられた。次に35SプロモーターとLIK1を結合して過剰発現させた植物体及びLIK1欠損変異株(lik1-1,lik1-2,lik1-3)を用いて凍結耐性試験を行った結果、どちらも野生株と耐性に変化が見られなかった。一方、長日条件下で生育したLIK1過剰発現植物では、野生株に比べてロゼット葉の数が多くなり花成に遅延が見られた。また2週間以上の長期の低温条件で生育した植物をさらに通常生育条件に移した場合に、lik1では生育に遅延が見られた。これらの結果からLIK1は低温ストレスにより誘導され、花成や生長を制御する可能性が示唆された。