抄録
シダ植物アジアンタムの気孔は光に応答して開口するが、種子植物と異なり青色光に依存した気孔応答を示さない(Plant Cell Physiol., 47:748-755, 2006年 )。光に対する気孔開口のメカニズムを明らかにするため、光と二酸化炭素に対する気孔応答をアジアンタム生葉で測定した。青、緑、赤色光により効果的に気孔は開口し、光合成の作用スペクトルと一致した。赤色光(656±18nm)と遠赤色光(723±12nm)は気孔開口に対し顕著な相乗効果を示した。高等植物では、葉肉細胞光合成により低下した葉内二酸化炭素濃度(Ci)に反応して気孔は開口するが、アジアンタム気孔はCiに対して応答しなかった。さらに気孔開口に必要な光強度は気孔が存在する裏面を照射した時5 µmol m,-2 s-1、表面を照射した時20 µmol m-2 s-1であった。このことは孔辺細胞が光に直接反応して気孔開口を引き起こしている事を示している。そこで表皮断片に赤色光を照射すると気孔が開口し、同時にK+の蓄積が見られた。これらの反応は光合成電子伝達阻害剤により完全に抑制された。またこの開口はK+チャネルブロッカー、CsClにより阻害された。以上の結果はアジアンタム気孔は孔辺細胞の光合成に依存してK+を取り込み開口を誘導する事を示している。