抄録
青色光による気孔開口では、孔辺細胞に発現する青色光受容体フォトトロピン(phot1, phot2)が青色光を受容し、細胞膜H+-ATPaseの活性化を引き起こすことにより、気孔開口の駆動力を形成することが知られている。しかしながら、フォトトロピンからH+-ATPase活性化に至るシグナル伝達機構は多くの部分が未解明である。本研究では、青色光受容体フォトトロピンのシグナル伝達に関連した気孔開口の突然変異体を単離することを目的として、気孔開度に依存した葉面温度をサーモグラフィーにより検出するスクリーニングを行った。スクリーニングは、青色光に依存した気孔開口が見られないフォトトロピン2重変異体と野生型の葉面温度差が、光照射下で区別できる条件で行った。その結果、EMS処理を行ったシロイヌナズナ約4万株より、野生株と比較して気孔が開いていない変異体10株を単離した。単離した変異体の1つについて詳細な解析を行った結果、phot1の下流因子であることが既に知られているrpt2であることが明らかとなり、本スクリーニングにより実際にフォトトロピンのシグナル伝達に関連した変異体を単離できることが示された。また、気孔が顕著に開口した変異体も5株単離しており、これら変異体の気孔開度実験の結果についても報告する予定である。