抄録
コケ植物であるヒメツリガネゴケでは、phy1からphy4の4つのフィトクロムが知られており、分枝形成、光屈性、葉緑体光定位運動に関わると考えられている。本研究では、ヒメツリガネゴケにおけるフィトクロム各分子種の役割を明らかにするためにYFPとフィトクロムの融合タンパクを発現する過剰発現株を作製し、光反応の変化、細胞内局在を解析した。
ヒメツリガネゴケは原糸体の先端成長と分枝形成を繰り返して成長、発達し、分枝形成は、青色光及び赤色光によって調節される。PHY2, 3過剰発現株においては誘導される分枝の数が野生株に比べて発現量依存的に増えていた。従って、phy2, 3は分枝形成に役割を持つと考えられる。さらに、phy:YFPの細胞内局在も分子種間で異なっていた。白色光培養条件下では、全ての分子種の過剰発現株において、phy:YFPは核と細胞質に見られる。核ではスペックルが観察されるが、核スペックルの頻度は分子種間で異なっていた。核スペックルは暗所で培養した原糸体にも見られ、スペックルを持つ細胞の頻度は分子種間で異なっていた。これらの結果から、フィトクロム分子種によって仲介する光反応の機能メカニズムが異なることが示唆される。