抄録
植物の赤色・遠赤色光受容体であるフィトクロムには、複数の分子種が存在する。アラビドプシスではphyAからphyEまでの5分子種の存在が知られているが、イネにはphyA, phyB, phyCの3分子種があり、比較的簡単な構成になっている。これらは、多岐にわたる光応答反応で協調しながら、時に役割を分担して機能すると考えられている。本研究では、イネにおけるフィトクロムの機能分担を解析するために、まず、3分子種について対応するゲノム領域からプロモーターをクローニングした。クローン化したプロモーターにそれぞれのcDNAをつないでフィトクロム変異イネに戻し、形質転換後代の幼植物について光形態形成を観察した結果、phyA, phyB, phyCそれぞれについて機能の回復が認められ、単離したプロモーターは十分な機能を持つことが明らかとなった。そこで、GUS遺伝子をレポーターとして遺伝子発現様式の解析を行ったところ、3分子種のプロモーターに発現の強弱の他に発現組織の優位性において差異があることを見いだした。また、分子種ごとの細胞内分布と核移行の光応答性について、GFP融合フィトクロム導入形質転換イネを用いて比較した。これらの結果について併せて報告し、イネにおける3分子種のフィトクロムの発現・存在様式の違いと機能分担について考察する。