抄録
私は今までに、イネのクリプトクロムが青色光下で初期の光形態形成(幼葉鞘、葉鞘、葉身の伸長抑制、葉身幅の拡大、葉の傾斜)と開花に関与していることを明らかにしてきた。しかし、イネのクリプトクロムのシグナル伝達経路について詳細は不明である。
そこで青色光照射した時に特異的に発現量が変化する遺伝子をマイクロアレイ解析によって探索したところ、活性型ジベレリンを不活性化する酵素であるGA2ox遺伝子の発現が青色光照射によって顕著に増大することが分かった。この結果は個別のプライマーをデザインしてRT-PCRによっても確認することができた。また赤色光によっては誘導されないことも明らかになった。
次に、7日間暗所で生育させた後に24時間青色光照射したイネの芽生えのジベレリンの内生量を計測したところ、活性型ジベレリン量が青色光照射によって減少していることが確認された。これらの結果から、暗所では活性型ジベレリンが蓄積してイネの幼葉鞘、葉鞘を伸長させるが、そこに青色光を照射すると活性型ジベレリンが不活性化されることにより伸長が抑制される可能性が示された。