抄録
NIT細胞はタバコBY-2由来の高濃度Ni耐性株である。今回、細胞壁においてNIT細胞に特有の金属結合様式が存在することが分かったので検討した。
まずNi処理をしたプロトプラストと細胞全体のNi濃度の差から細胞壁中のNi量を算出した。この結果、野生型(WT)細胞では細胞壁画分のNi量が検出できなかったのに対し、NIT細胞では細胞の全Niのうち20%が細胞壁に局在した。
同様にNi無処理の条件で細胞壁中のFe、Mn、Zn濃度を算出すると、WT細胞ではそれらの金属量が微量であったのに対し、NIT細胞では細胞全体量の62%、34%、16%が細胞壁にそれぞれ存在することが判明した。これらのことから、NITの細胞壁には重金属に特異的な何らかの金属結合サイトが存在すると考えられる。一方で、NIT細胞に700 μM Ni処理した場合には、細胞壁中のFe、Mn、Zn濃度は大きく減少し、これらの金属の結合領域が高濃度のNiによって占有されることが考えられた。
次にNIT細胞から単離した細胞壁でNiが安定して結合できるpH条件を調べたところ、細胞壁中のNiはpH 5~6においてNiが最も強固に保持されたのに対して、pH 4以下およびpH 7以上ではNiが容易に細胞壁から乖離した。同様の結果がFeにおいても見られたことから、NiとFeを結合する物質が同一である可能性が高まった。このpH依存性から、細胞壁結合タンパク質が関与する可能性も視野に入れてプロテアーゼ処理や多糖の分解操作を行った結果についても報告する。