抄録
イネ22kオリゴcDNAマイクロアレイを用いて日本晴のカドミウムに応答した遺伝子発現の変化を調べた。水耕栽培で、カドミウム10 μ M処理3時間後および1 μ M処理1、2、3、8日後のイネの地上部と根を用いて、カドミウム処理による遺伝子発現変化を観察した。その結果、10 μ M,3時間のカドミウム処理により、アレイ上の約2万の遺伝子のうち、地上部では211個、根では1207個の遺伝子がコントロール条件に比べて2倍以上の有意な発現変動を示した。発現が大きく上昇した遺伝子として、ヒートショックプロテインやシトクロム P450 タンパク質、グルタチオンSトランスフェラーゼなどのストレス防御との関連が報告されているタンパク質をコードする遺伝子があった。また、光合成関連遺伝子、リボソームタンパク質をコードする遺伝子で発現の低下がみられ、ジャスモン酸合成に関わる遺伝子や、ムギネ酸合成などの鉄欠乏誘導性遺伝子の発現上昇が見られた。カドミウムの輸送に関与する可能性の高い遺伝子を探索したところ、ABCトランスポーター遺伝子の中にカドミウム処理によって強く発現の誘導されるものが多くあり、細胞へのカドミウムの侵入防止や排出・隔離の機能を担っている可能性が示唆された。