抄録
塩生植物Suaeda salsa (L.) Pallにおける体内NO3の還元・同化に対する培養液中へのNaあるいはClの添加効果について15Nを用いて検討した。0.75mM NH4NO3を含む-Na-Cl培養液で25日間前培養した後、1.5mM NO3を単独窒素源とした培養液に(1)-Na-Cl区、(2)+Na-Cl区、(3)-Na+Cl区、(4)+Na+Cl区を組み合わせた。NaおよびCl濃度は5または50mMに設定し、塩処理開始0,3,7,11日目にバイオトロン室で明期12hの15N処理を行った。塩処理11日後の生育は+Na+Cl区で最も良く、次いで-Na+Cl区>+Na-Cl区>-Na-Cl区の順であった。植物体内の全NおよびNO3-Nのatom% excessに処理区間の差は見られなかったが、全NからNO3-N、NH4-N、アミノ酸-Nを差し引いた粗タンパク-Nのatom% excess、全Nおよび粗タンパク中の15N含有量は-Na+Cl区および+Na+Cl区で高かった。一方、NO3中の15N含有量は+Na-Cl区で高かった。以上の結果、NaはNO3の還元・同化とそれに基づく生育促進に関与しないが、ClはNO3の還元・同化を促進して粗タンパク含有率を高める機能をもつと考えられた。