日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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鉄欠乏誘導性転写因子OsIRO2過剰発現は石灰質アルカリ土壌においてイネの鉄吸収および移行を向上させる
*小郷 裕子板井 玲子中西 啓仁小林 高範高橋 美智子森 敏西澤 直子
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p. 0902

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抄録
イネ科植物は三価鉄のキレーターであるムギネ酸類により、根圏から鉄を吸収する。多くの鉄欠吸収に関わる遺伝子の上流には鉄欠乏応答性シスエレメントIDE1,IDE2が存在する。最近、我々はイネにおいて鉄欠乏応答性シスエレメントIDE1に結合する転写因子IDEF1を単離し、IDEF1が鉄欠乏誘導性bHLH型転写因子OsIRO2の発現を制御することを示した。OsIRO2は、ムギネ酸類合成経路の遺伝子、鉄トランスポーターなどの発現制御に必要であることを我々は既に報告しており、35SプロモーターによるOsIRO2過剰発現(OX)イネは、WTに比べムギネ酸類合成経路の遺伝子の発現が高く、ムギネ酸類の分泌量が多かった(Ogo et al. Plant J. 2007)。本発表では、OXイネの石灰質アルカリ土壌における鉄欠乏耐性について報告する。OXイネはWTに比べクロロシスを呈しにくく、収量はWTに比べ3-5倍にも上った。これはOsIRO2の過剰発現によって鉄吸収に関わる遺伝子群の発現が強化された結果と考えられた。さらに、OXイネは玄米中の鉄濃度もWTに比べ高かった。これらのことから、OsIRO2の過剰発現により、石灰質アルカリ土壌という鉄が吸収されにくい条件において、鉄の吸収だけでなく移行も強化されることが示された。
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© 2008 日本植物生理学会
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