抄録
鉄の吸収は、植物全体から根へ送られる長距離シグナルによって制御されることが、タバコを用いた研究で明らかにされている。本研究では、アラビドプシスにおいても、根における AtIRT1, AtFRO2の発現量は地上部から送られる促進的なシグナルで制御されることを明らかにした。鉄欠乏状態のアラビドプシスの葉を切除してから6時間後の根におけるAtIRT1, AtFRO2の発現量を定量したところ、切除前より有意に減少した。一方、鉄の濃度低下によって発現が誘導されるとして知られていたAtbHLH038, AtbHLH100の発現量は、葉の切除6時間後も切除前と同等だった。これらは、AtIRT1, AtFRO2が長距離シグナルに影響を受ける遺伝子、AtbHLH038, AtbHLH100はその場の鉄濃度に影響を受ける遺伝子であることを示唆する。次に我々は鉄欠乏状態または鉄欠乏状態から鉄を再補給させて4時間後のアラビドプシス地上部のRNAの網羅的解析を行った。本研究ではHiCEP (High Cleavage Expression Profile)と呼ばれる解析手法を用いて、鉄吸収を制御する長距離シグナルに関わる新規な遺伝子の同定を試みた。HiCEP解析で有意な転写産物量の変動が認められたものについて、real-time PCRを用いて再現性を確認した。