抄録
ホウ素は植物の必須微量元素の一つである。ホウ素は過剰に存在すると植物に毒性を示す。酵母においては過剰のホウ素によってスプライシング阻害が起こることが、毒性発現機構であることが示されているが、植物における毒性発現の分子機構は不明である。毒性機構の解明を目的として、ホウ素過剰に感受性のシロイヌナズナ変異株の解析を進めている。前回までに7系統の同定と解析を行い、少なくとも4つの異なる遺伝子座の変異がホウ素過剰感受性を引き起こすことを報告した。今回は、マッピングの進捗状況と変異株の性質について検討を加えた結果を報告する。
7系統のマッピングを進めた結果、新たに2つの異なる遺伝子座が見つかった。少なくとも6つの遺伝子がホウ素過剰耐性に重要であることが示された。最もマッピングの進んだ系統では候補領域が約10kbpとなったので、コードされている4つの遺伝子についてシークエンス解析を行った。その結果、1つの遺伝子でアミノ酸が停止コドンに置換する点変異が起きていることを発見した。また、変異株の塩、ヒ素、カドミウムストレス感受性を検討したところ、これらのストレスに対する応答には異常は認められず、変異がホウ素過剰特異的に作用することが明らかになった。また、変異株のホウ素濃度を測定したところ、地上部のホウ素濃度が低い傾向が認められた。