日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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過剰CuCl2条件下でのイネ葉身の遺伝子発現解析:Cu応答性遺伝子のCu感受性に関して
*須藤 恵美井藤賀 操畑中(吉田) 佳代小野 芳朗榊原 均
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p. 0913

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抄録
産業発展などに伴い環境へのCuの放出が進み、Cu汚染が生態系に与える影響を調べることは極めて重要である。私達は、過剰Cu条件下のイネ葉身(Oryza sativa L. cv. Nipponbare)についてDNAマイクロアレイ解析(Agilent rice 22K oligoarray kit)を行った。本研究ではCuCl2を10、45、130 μM含むイネ水耕液をイネ根に投与し、処理1日後におけるイネ葉身(最上位完全展開葉)の応答を調べた。まず、過剰Cu条件では葉身においてCuの蓄積が見られ、さらに大気CO2分圧下の光合成活性が低下した。次にDNAマイクロアレイ解析より、CuCl2曝露濃度に応答し発現を増大あるいは減少させる遺伝子を305種、Cu応答性遺伝子として選抜した。その組成より、過剰Cu処理によって、防御、ストレス応答系の遺伝子は発現が増大、光合成、物質輸送系のそれは発現が減少する傾向が確認された。さらに遺伝子の発現強度比(F)を考慮し、個々のCu応答性遺伝子のCu感受性を50%影響濃度(EC50)、および130 μM Cu条件における発現変動幅(|log2F|130)から評価した。その結果、防御系遺伝子群では他のカテゴリーと比較してEC50が低く|log2F|130が高かったことから、それらがCuに対して特に高い感受性を持つことが示唆された。従って、防御系遺伝子群の発現応答は、Cuストレス応答機構とより重要な関わりを持ちうるものであると考えられた。なお、本研究は文部科学省リーディングプロジェクトの支援による。
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© 2008 日本植物生理学会
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