日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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コシアブラにおけるマンガン超集積の特異性とマンガン獲得機構
*水野 隆文平野 賢司加藤 晋太細野 篤子小畑 仁
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p. 0914

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抄録
コシアブラは日本各地の山野に見られるウコギ科の高木であり、マンガン集積性を持つことで知られている。今回三重県山野のコシアブラを供試し、マンガン超集積特性について解析を行った。コシアブラ葉におけるマンガン濃度は生育年数に依存し、最高23,500 mg kg-1の集積が確認された。興味深いことに、コシアブラは山林の非汚染土壌でマンガン超集積性を示し、その他の金属には集積性を示さなかった。また、コシアブラのカルスから再分化体を作成し、不溶態マンガンの溶解と吸収について解析を行った結果、コシアブラ根圏で急速なpH低下を伴う不溶態マンガンの可溶化と、再分化体へのマンガン集積が確認された。この現象はプロトンATPase阻害剤の添加により起こらなくなることから、コシアブラのマンガン獲得には根圏でのプロトン放出を伴う輸送メカニズムが関与していることが示唆された。一方、根圏のpH低下だけではマンガン特異的集積を説明できないことから、本植物にはマンガンに親和性の高い輸送タンパク質の存在が予想された。他の植物でマンガンの輸送が報告されているZIPおよびNRAMPトランスポーターのホモログ遺伝子(CsZIP1およびCsNRAMP1)をコシアブラから単離し、その輸送能を検討した。しかし、マンガン輸送能欠損酵母を用いた補完試験では、これらの遺伝子発現によるマンガン輸送能は確認できなかった。
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© 2008 日本植物生理学会
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