日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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キュウリの根の水分屈性と重力屈性に機能するオーキシン輸送機構
諸橋 恵太矢内 健一堀田 拓哉藤井 伸治宮沢 豊*高橋 秀幸
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p. 0920

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抄録
陸上植物の根は、乾燥ストレスを回避するために、重力屈性および水分屈性を発現させて伸長方向を制御すると考えられる。これまで我々は、キュウリの根が重力屈性を強く発現させ、それが水分屈性をマスクするように作用するが、クリノスタット上で重力屈性を消去すると水分屈性が顕著に発現することを報告した。根の重力屈性に関しては、分子遺伝学的解析からオーキシン輸送が重要な役割を果たしていることが知られているが、水分屈性におけるオーキシン輸送の関与についてはわかっていない。そこで本研究では、キュウリの根の水分屈性と重力屈性におけるオーキシン輸送の役割を、オーキシン輸送阻害剤の作用およびオーキシン排出キャリアの遺伝子・タンパク質発現から検討した。その結果、オーキシン排出キャリア阻害剤の処理は、伸長成長に大きな影響を及ぼすことなく、水分屈性と重力屈性を著しく抑制した。また、根端の表皮・皮層細胞で発現し、根の求基的オーキシン輸送を担うと考えられるCsPIN5の発現は、水分屈性および重力屈性の発現に伴って、それぞれ低水分側および上側(いずれも湾曲する根の外側)において顕著に低下した。これらの結果から、CsPIN5の偏差的な発現を介して水分屈性では低水分側、重力屈性では上側でオーキシン輸送が低下し、伸長帯におけるオーキシンの不均等分布・屈曲を誘導すると考えられる。
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© 2008 日本植物生理学会
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