抄録
重力屈性について、重力方向の感受や偏差成長による屈曲に関しては理解が進んできた。しかし、傾斜重力屈性などシュートや根の伸長方向を重力に対して任意の角度に制御する機構についてはほとんど不明である。
根端の伸長方向を定量的に解析するため、垂直に立てた固形培地上にシロイヌナズナの根系を生育させ、スキャナで画像を取得した。画像上で主根と側根の走向をトレースして曲線をあてはめ、根の基部からの曲線長に沿って伸長方向を算出した。野生型Columbiaでは側根が5 mm伸長するまでに鉛直下方へ屈曲する一方、突然変異体hy5では鉛直下方への屈曲が緩やかで、傾斜した伸長方向を示す現象を定量的に記述できた。
我々は種々の薬剤を与えて生育させたhy5と野生型の側根の伸長方向を定量的に解析することで、その要因を探索している。なかでもオーキシンは根の重力屈性に関わっていることから、オーキシンやその極性輸送阻害剤の影響に着目して解析している。また、様々な自然変異体やhy5を変異原処理した突然変異体について側根の伸長方向がhy5と異なる系統を探索している。同時に、傾斜屈性応答時におけるオーキシンとオーキシン排出担体PIN ファミリーの根系における分布を、オーキシンレポーターDR5:GUSとPIN ファミリーのGFPとの融合タンパク質をそれぞれ用いて調べている。これらの解析から、側根の傾斜重力屈性の分子機構を検討する。