抄録
根の重力に対する初期応答の異常なシロイヌナズナ突然変異体では重力屈性が完全に消失しないため,突然変異体のスクリーニング・遺伝解析のための効率的な形質評価が行えず,根の重力応答に関する遺伝学的解析が立ち後れていると考えられる.この問題を克服するため,重力屈性と光屈性との干渉作用を利用した実験系に注目し、現在までに、EMS処理で突然変異誘発した10万株のシロイヌナズナのM2個体をスクリーニングし、根の重力屈性が異常になった44系統の突然変異体を単離した.これらのうち1系統は,デンプン合成が欠損しアミロプラストが沈降せずに根の重力屈性は屈曲速度の低下にとどまるpgm-1 (phosphoglucomutase-1) 突然変異体のアリルであることが明らかになった.したがって,本実験系を用いることにより、根の重力屈性の低下を高い感度で検出でき、新規のシロイヌナズナの根の重力屈性が異常な突然変異体の単離と、その遺伝学的解析が可能になると期待される。本発表では,他の系統に関する遺伝解析の結果も報告する.