抄録
植物の病害抵抗性では、MAPキナーゼカスケードが重要な役割を果たしていると考えられている。シロイヌナズナMEKK1(MAPKKK)は、MKK1、MKK2 (MAPKKs)、MPK4 (MAPK)と相互作用し、一連のカスケード(MEKK1-MKK1、MKK2-MPK4)を構成する。興味深いことに、mekk1変異体は強い矮性を示し、構成的なPR遺伝子の発現やカロースの蓄積がみられ、維管束組織特異的かつ温度依存的に細胞死とH2O2蓄積が引き起こされる。これらの表現型はRAR1およびSID2に部分的に依存していることから、MEKK1の欠損が抵抗性(R)タンパク質の活性化を引き起こし、サリチル酸を介して細胞死などの防御反応を誘導している可能性が推測された。
mekk1変異体において表現型の原因となる遺伝子を同定するため、我々はmekk1変異体形質を抑制する変異体の単離を試みる事とした。しかしながら、mekk1のホモ個体は致死であり種子の採取は不可能であることから、この問題を回避する必要があった。我々はMEKK1のN末端制御領域を過剰発現することで、mekk1様の表現型を再現可能であることを見いだし、ステロイド誘導系ベクターと組み合わせることで致死形質を回避した。この形質転換植物を用いたスクリーニングについて報告する。