抄録
我々はアブラナ科野菜類炭そ病菌(Colletotrichum higginsianum)がシロイヌナズナのエコタイプColumbia(Col-0)に感染することを見いだした。また、シロイヌナズナの他のエコタイプにおける炭そ病に対する感受度を検定した結果、抵抗性を示すエコタイプを同定した。これらのうち、Ws-0は本菌の攻撃に対して激しい細胞死を伴う抵抗反応を示した。Ws-0とCol-0を交雑して得たF1植物は全て抵抗性を示し、F2植物は抵抗性と感受性が3:1に分離したことから、抵抗性は優性で1遺伝子支配であることが明らかになった。また、SSLP(Simple Sequence Length Polymorphism)マーカーを用いてマッピングを行った結果、5番染色体下腕にR遺伝子(RCH2; for Recognition of C. higginsianum)が存在することが示唆された。さらにWs-0のT-DNA挿入変異体ライブラリーから3ラインの炭そ病感受性変異株を得たが、そのうち22980-1はT-DNA挿入による変異ではないことが明らかとなった。そこで上記マッピングにより得られた情報をもとに推定遺伝子の塩基配列を決定した結果、病原細菌に対する抵抗性遺伝子の第3エキソン部位に5塩基の欠損が認められた。他の2ラインについては今後解析する予定である。