抄録
ナス科青枯病菌(Ralstonia solanacearum)に対する植物の生体防御機構、および発病に関わる植物因子の単離と機能解析を行った。病原性、非病原性R. solanacearum接種タバコ葉より調製した均一化cDNAライブラリーを鋳型にDifferential display 法によって防御・発病過程に関連するタバコ遺伝子を単離した。そのうち低分子熱ショックタンパク質をコードするNtshsp17(Nicotiana tabacum small heat shock protein 17)およびそのオルソログNbshsp17(N. benthamiana small heat shock protein 17)に着目した。大腸菌で発現したNtshsp17タンパク質は分子シャペロンとして機能した。Ntshsp17は非病原性のR. solanacearum接種、サリチル酸、ジャスモン酸等の植物細胞内情報伝達分子によって強く誘導された。Nbshsp17サイレンシング植物では過敏感反応には影響はなかったが、防御関連遺伝子の発現が抑制されるとともに、非病原性R. solanacearumの増殖が促進された。さらに、病原性R. solanacearumの増殖のみならず、発病も促進された。以上の結果は低分子ショックタンパク質(Ntshsp17およびNbshsp17)が植物の生体防御に極めて重要な役割を持つことを示唆している。