抄録
遺伝子共発現解析は、遺伝子の機能推定のための有効な手段の一つである。同じ共発現遺伝子グループに属する遺伝子は関連した機能を持つと考えられる。多くの作物が属すナス科の一つであり、自身も主要な作物であるトマト(Solanum lycopersicum)においても、マイクロアレイデータの蓄積により、共発現遺伝子解析が可能となってきた。そこで、機能未知遺伝子の機能を推定するために、それぞれの共発現遺伝子グループ全体としての生物学的意義の推定を試みた。
当研究室で取得された73枚のAffymetrix社GeneChip Tomato Genome Array(10038プローブセット)の発現量データに対して、共発現相関係数と遺伝子間の共発現関係の疎密に注目した包括的な解析法を適用し、共発現グループが抽出された。プローブセットのアノテーションから、共発現グループ全体としての生物学的意義を推定できるものを見出した。フラボノイド合成関連遺伝子群、プロテアーゼインヒビター遺伝子群、DNA修復タンパク質遺伝子を含むそれぞれの共発現遺伝子グループには機能未知の転写因子の遺伝子が含まれており、これらの遺伝子の制御に関わっていることを示唆している。
これらの共発現遺伝子グループを紹介するとともに、その一部について行った実験による検証の結果を報告する。