抄録
植物体内のホルモン作用や状態を調べる方法には、定量分析やマーカー遺伝子の発現解析等が用いられてきたが、定量には多くのサンプル量が必要とされる上、全ホルモンを同時に、感受性を含めて解析する手法は確立されていない。本研究では、網羅的な遺伝子の発現解析手法として有用なマイクロアレイを用いて、植物体におけるホルモンの生理活性や植物の応答を簡易に解析する新しい手法の開発を行った。我々がAtGenExpressJPNで公開しているマイクロアレイデータセットから、シロイヌナズナの芽生えに代表的な植物ホルモンを処理した実験を用い、ホルモン応答性遺伝子群の発現プロファイルを作成した。発現変動の幅が大きく有意な水準で変動した遺伝子を抽出し、発現値(log2 treatment / mock)を付加したものを各ホルモン応答の標準発現プロファイルとした。次に、作成した各ホルモンの標準発現プロファイルと解析対象のマイクロアレイデータに含まれる対応遺伝子群の発現値の相関を求めることにより、ホルモン応答の検出を試みた。ホルモン応答レベルが明らかになっている実験のデータセットの解析を行い、本手法の評価を行ったところ、阻害剤処理、ストレス処理、ホルモン過剰発現変異体のデータセットから得られた結果は、全て過去に報告されているホルモンの応答または抑制効果に一致し、このことから本手法を用いた植物ホルモンの生理活性や植物の応答の検出が可能であることが示された。